– UAE、6月から法人税導入 税制「国際標準」目指す [2023/05/31更新]
アラブ首長国連邦(UAE)は6月1日に法人税を導入する。税制を国際標準に近づけ、一部企業の租税回避につながっているとの批判をかわす狙いがある。税率は9%と他国に比べて低く設定し、外国企業の誘致で優位性を保つ思惑も透ける。
UAE政府がこれまでに公表している内容によると、37万5000ディルハム(約1400万円)を超える利益を計上する企業が課税対象で、6月1日以降に始まる会計年度から適用される。例えば3月期決算の企業の場合、2024年4月1日からの決算年度が課税対象となる。
日本企業を含む多国籍企業が進出する自由貿易地区では、当局への税務登録などは必要になる一方、原則として非課税のままだ。小規模事業者への課税は制限され、投資によるキャピタルゲイン(売却益)や給与などの個人所得も引き続き非課税だ。
UAEなどの中東産油国は、税率の低さを生かして企業誘致を進めてきた。ただ一部の多国籍企業が税率の低い国に拠点を置き、本国での課税を回避しているとの批判もある。そこでUAE政府は一定の税率を設けて企業に決算状況などを報告させ、税制度を国際標準に近づける。9%という税率は世界的に見るとなお低水準だ。同じ湾岸協力会議(GCC)諸国で比べても、外国企業への法人税が20%のサウジアラビアや、10%を課税するカタールなどより低い。
UAEの経済都市ドバイには特に企業の多くが中東の拠点機能を置いている。税体系の透明性を高める一方で、優遇措置も続けることで経済の中心地としての役割を維持しようとする同国政府のねらいが透ける。UAEの法人税率は低いが、税制度の設計は世界的に受け入れられる水準になっている。9%の税率は隣国カタールの法人税率(10%)を意識している様子。
21年には租税回避に歯止めをかける狙いで、約130カ国・地域によって各国共通の最低税率を15%とする国際合意がなされた。UAEも加わっており、法人税の導入はこれに対応する狙いもありそうだ。今後は税率を引き上げる可能性が指摘される。
UAEは同時に、税収拡大による経済の「脱石油」改革も進める。
今回の法人税導入は2018年の付加価値税(VAT)に続く動きだ。脱炭素化が世界的な潮流となるなか、長期的には石油や天然ガスなどの需要は減少が見込まれる。中東産油国は経済改革を進めており、法人税は安定的な税収源の一つとなる。
GCC諸国では法人税が課税されていないバーレーンでも、税制度の透明化や収入源の多様化を目的に導入の検討が進む。中東メディアによると、同国のサルマン財務・国家経済相は5月下旬に「法人税を課すのは世界的な方向性で、バーレーンもこの動きに従う」と語った。(引用:日経デジタル)