– 中東で高まる日本食人気 ハラル対応で食材輸出も急増 [2023/05/10更新]

アラブ首長国連邦(UAE)をはじめとする中東諸国で日本食の人気が高まっている。比較的手ごろな価格帯で和食を提供する店舗が増え、和食や日本の食材が身近になっているためだ。日本食を販売する事業者のハラル対応への努力もあって、中東への日本からの食材の輸出は新型コロナウイルス禍の前に比べて6割以上増えている。


2月下旬、UAEの在ドバイ日本総領事公邸で日本の原木シイタケを拡販するための試食会が開かれた。集まったのはUAEのレストランの料理人や、食材の輸入を手掛ける業者の社員ら数十人。レストランの格付けガイド「ミシュラン」の星付き和食店のシェフをドイツ・デュッセルドルフから招き、シイタケのタルトなどが供された。

関口昇総領事はあいさつで「ユネスコの世界遺産に登録された和食で、シイタケはうまみを提供する材料の1つだ」と紹介。招待客らは傘の開いたシイタケと傘の開ききっていない乾燥シイタケの「どんこ」の違いの説明などに耳を傾けつつ、シイタケの味わいや食感を楽しんだ。

ドバイでも大型スーパーでシイタケやエノキなど、日本の食卓で一般的なキノコは入手できる。ただ、日本産のものを見かけるのはまれだ。試食会を主催したシイタケ販売の杉本商店(宮崎県高千穂町)の杉本和英社長は「日本の原木栽培のシイタケは、うまみの元となるグアニル酸が多く含まれる」と話す。

シイタケはイスラム教徒や、ベジタリアン(菜食主義者)でも食べることができる食材だ。杉本商店ではシイタケに付着することがある小さな虫の卵の検査を導入することで、ユダヤ教の食べ物の規定である「コーシャー」の認証も獲得した。杉本社長は「日本国内の需要が減り、作り手の数も減少している。中東は最も開拓したい市場だ」と力を込めた。

日本から中東への食材や飲料の輸出は増加傾向にある。財務省の貿易統計によると、サウジアラビアやUAEなどの湾岸協力会議(GCC)諸国やイスラエル、ヨルダンなどを含む中東地域への食料品・飲料などの輸出額は、2022年に前年比28%増の約125億円に達した。コロナ禍前の19年に比べると65%増えており、世界全体への輸出額が同50%増だったことに比べても伸び率が高い。

国別で見ると、最も輸出額が大きく中東全体の過半を占めるUAEへは22年に19年比で2倍以上の約72億円を輸出した。クウェートは19年から22年までに2.5倍超、イスラエルやカタールなども19年から22年にかけて倍近く増加した。世界的に日本の食材への注目が高まるなかでも中東向けの輸出は高い伸び率を示している。

ただ、中東への日本食材の輸出割合は全世界の1割程度にとどまり、輸出額は西ヨーロッパ向けの5分の1程度とまだ小さい。イスラム教徒が主流の多くの国へのアルコールの輸出は容易ではなく、イスラムの教えにのっとった食品であることを示すハラルへの対応などのハードルもある。中東での日本食文化のさらなる拡大には、こうした環境への対応がカギを握る。(引用:日経デジタル)



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