– サウジとUAE、クリーンエネルギーで日本に接近 [2023/07/20更新]

サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)が脱炭素で日本に秋波を送っている。水素やアンモニアといった燃焼しても温暖化ガスを排出しないクリーンエネルギーの開発での技術協力を皮切りに、クリーンエネルギーの輸出拡大につなげる思惑がある。

「両国の水素などエネルギー分野での協力が発展している」。UAEのアブドラ経済相はアブダビでのフォーラムで話した。中東を歴訪した岸田文雄首相は、アンモニアの共同生産に向けた官民の枠組み設置でサウジと合意。UAEとも、25年国際博覧会(大阪・関西万博)でアンモニア燃料の火力発電による電力供給をめざす覚書を結んだ。

サウジは60年までに温暖化ガスの排出量を実質ゼロとする目標を掲げている。生産時に発生する二酸化炭素(CO2)を回収した「ブルー水素」「ブルーアンモニア」や、太陽光発電や風力発電でつくる「グリーン水素」「グリーンアンモニア」の生産を目指す。
サウジでは原油とともに天然ガスも産出し、ブルー水素の生産時に発生するCO2を砂漠の地下などに貯留しやすい。広大な土地に降り注ぐ太陽光を使ったグリーン水素でも、世界で最も低コストに生産できる国の一つとされる。30年のサウジのグリーン水素1キログラムの生産コストは、日本の3分の1以下にとどまる。ロシアや米国などと比べてもコスト競争力は高い。

50年に温暖化ガス排出量ゼロを目指すUAEも3日、30年までに最大545億ドル(およそ7.5兆円)を投じて再生可能エネルギーの供給能力を拡大させる新たなエネルギー戦略を決定した。ロイター通信は同国高官が「50年までに年間1500万トンの水素の生産を見込んでいる」と語ったと報じた。

サウジやUAEは主要産油国として、日本をはじめとする先進国のエネルギー供給元として影響力を保ってきた。脱炭素時代にも低コストに生産できる水素やアンモニアの供給を拡大し、エネルギー生産地としての地位を保ちたい思いは強い。

サウジやUAEとのクリーンエネルギーの協力は、韓国やドイツなどでも進んでいる。22年12月には日本に先立ってアラムコからのブルーアンモニアが韓国に到着した。ドイツも22年3月、水素分野でUAEと複数のプロジェクトの推進で合意した。

4月には、サウジの国営石油会社サウジアラムコが第三者の認証を取得したブルーアンモニアが日本に初めて輸送された。アブドルアジズ・エネルギー相は岸田氏の訪問に合わせて16日に出した声明で「クリーンエネルギーの開発にとって画期的な出来事だ」と称賛した。(引用:日経デジタル)

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