– UAE王族資金力が欧州サッカー界の競争「破壊」 [2023/07/12更新]

7月はサッカーシーズンの端境期である。新シーズンに向かって夢を膨らませる季節だが、昨季のマンチェスター・シティーの圧勝は記憶に新しい人も多いはず。
イングランド・プレミアリーグとFAカップ、欧州チャンピオンズリーグ(CL)の3冠を獲得した昨季のシティーはあきれるほど強かった。比肩できるチームは当代に存在せず、過去にもざらにない。2011年のバルセロナ、50年前のアヤックスくらいだろうか。

シティーの栄光はグアルディオラ監督の指導力にも支えられているが、なによりオーナーであるアラブ首長国連邦(UAE)の王族シェイク・マンスール・ビン・ザーイド・アル・ナヒヤン氏の莫大な資金力のおかげである。同氏の投資グループは08年にシティーにかかわって以来、新戦力の移籍金だけで20億ユーロ以上を費やした。

スペインリーグのハビエル・テバス会長はこれを「財務ドーピング」と呼んだ。シティーはまた、115項目にわたるプレミアリーグの財務規則に違反した疑いを持たれてもいる。この調査は容易に白黒がつきそうにないが、たとえシティーが「シロ」だとしても、中東のオイルマネーが欧州サッカー界に引き起こしている問題はなくならない。
シティーやパリ・サンジェルマン、ニューカッスルを買収したアラブの支配者たちは巨大資本の投下によって公正な競争を破壊する。特にシティーの強さはめざましく、レアル・マドリードやリバプール、バイエルン・ミュンヘンといった旧来の巨人たちから一頭地を抜く存在になりつつある。
アマゾン・ドット・コムやアップル、フォルクスワーゲン、トヨタ自動車のようなリーダーがそれぞれの業界にいるのだから、サッカー界にメガクラブが誕生するのも理にかなっているのかもしれない。だが、これは本当に困ったことである。

いつも同じチームが勝つスポーツはつまらない。シティーの財政的優位がこのまま進めば、ほかのチームはアウトサイダーに成り下がり、サッカーは予測不可能性という魅力を失う。

一部のチームが独占的な地位を得ることがないように、UEFAはクラブの資金調達を制御しようと試みる。しかしこれまでのところ、その試みは惨敗している。シティーの欧州CL優勝は美しいサッカーの勝利であるが、このスポーツにとって脅威でもある。(引用:日経デジタル)

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